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結香は段ボールを並べた上で、すぴすぴと昼寝していた。いやぁ~目の保養になるわぁ~。
俺はまたどうでもいいことを思った。
結局、結羽先輩は部屋の隅っこで三角座りしながら指でのの字をなぞっていた。←訂正、病んでいた。
声を掛けてみても返事が全く無かったので、誠に失礼だが勝手に帰宅させて頂くことにした。
《災禍は結羽先輩に声を掛けてみた》
《返事がない。ただの湿っぽい結羽先輩のようだ》
↑ド○クエ風。
「でわ。さようなら」
「…さようなら……」
俺達はふて腐れてる結羽先輩を部室に一人残して学校を後にした。
*
──校舎から自転車置き場へ伸びる道の上。空に浮かぶ雲は、朱色に染められていてなかなか綺麗な景色だった。
「ねぇ……」
結香は辺りに溶けてしまいそうなくらい小さい声で俺を呼んだ。
「何だ?」
「ほら…あれ……」
「……?」
「……私、今日、車で送ってもらった…の」
結香は途切れ途切れの言葉で必死に説明している。彼女の途切れ途切れは、彼女が幼い頃から使ってる彼女特有の言葉だ。
聞き取りにくいが、彼女の気の小ささがよく出ているし、どこか頼りなくてイイ。
「だから……」
彼女の肩が小さく揺れた。
「…今日、一緒に帰ろ……」
結香のその台詞と上目遣いが俺を異様にドキドキさせた。思わず頬を紅潮させてしまいかけた。
「二人乗りは危ないけど、良いのか?」
「…うん。タクシーの料金払うよりは、危険なほうがいいもん……」
自転車置き場に続くアスファルトの上。俺達は笑った。理由なんて求めるなよ。
空は茜色に染まり、その上には月が浮かんでいた。
自転車置き場に並ぶ2つの影。
日の落ちたそこは、朝とは一転して寂しい感じを思わせる。
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