第一章

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 交差点の横断歩道を渡り、自宅へ向かおうとしていた。  この交差点の信号を渡ってすぐ、ラーメン屋と理髪店の間に人がギリギリ入れる幅の隙間がある。  普段なら素通りする隙間。俺はあの隙間に惹かれた。  なぜかというと理由は単純。そこには1匹の野良らしき猫(首輪を付けていなかったのでそう判断した)がいたから。  茶と白のミックスに特徴的な垂れ耳。あれは恐らく、スコティッシュフォールド系統の猫だなと当たりをつける。  俺は猫が好きだ。一目見て血統が大抵判別できるほどの大の猫好きなのだ。  野良らしき猫が、俺を見ると「にゃー」と鳴いて路地裏へ入ってしまった。俺は迷わず猫を追いかけた。  何でってそれは、聞くのは野暮というものだ。猫好きが猫を追っかけるのに、理由なんていらないから。
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