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「どうして、そうなるの!?」
乙女の気持ちなんかわかりもしない猫に、鋭い眼差しを向けて言い放つ。猫は気にする風もなく、にんまり顔で首を傾いだ。
「美味しくないのかい?」
「美味しいとかとか、不味いとか、そういう問題じゃないの!! そもそも、それは、食べ物じゃないの!!」
「…食べてはいけないんだね。僕らのアリス、君が望むなら」
「だからっ!! 私が言いたいのは、そういう事じゃなくって!!」
そこまでまくし立ててから、はっと我に返る。
私は何を言っているのだろう。これでは八つ当たりだ。
現に、チェシャ猫は、「どうしたんだい?」と、困ったように見やってくる。今さらながら、胸にちくりと痛みが刺した。
チェシャ猫は、間違ってなんかいない。悪いのは私だわ。
チェシャ猫がこの事を知らないだろうとは、予め予測してたはず。期待してしまった自分に、問題があるだけ。
知らないのなら、教えてあげくなくちゃ。そうしたら、彼は、答えをくれる。
きっと、くれる。
……と、思う。
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