第三章

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神隠し騒動はしばらくの間世間を騒がせた。しかし、時が過ぎるとまた事件は過去のものとして忘れ去られた。 そんなある日、日売新聞記者の渡部は首都圏から少し離れたニュータウンの取材に訪れていた。このニュータウンのある場所は鬱蒼とした森が広がっており、地元の人もあまり訪れようとはしなかった。この森は霧がよく発生したのでただでさえ悪い視界を、さらに悪くしてしまうからだ。 そんなある意味人跡未踏の森を大企業がニュータウン建設の為に切り開いたのであった。 ―この土地は霧が深いと聞いていたが確かに視界がかなり狭いな。 まだ昼間なのに電気をつけて車を走らせねばならない。渡部は注意しながら車を進めた。 ニュータウンには何世帯かがすでに入居していた。渡部は住民を取材することにした。 「このニュータウンの住み心地はいかがですか?」 「とても快適ですよ。今は真夏なのに標高が高めなのでとても涼しいんです。ただ今の時期は虫が沢山家に入ってきますね。それから霧がとても深いのも。家には小さい子供がいるから表に出すのが心配で」
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