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「おせぇぞ、アーロン」
その声を聞いて、その背中を見て、俺はなんとも言えない気持ちになった。
──オヤジ……。
十年ぶりの……再開。はっきり言ってどう接したらいいか、わからなかった。
だってそうだろ? この旅で色々、わかっちまったんだ。オヤジが……俺のことどう思ってたか、とかさ。俺は、今でも大嫌いだ。あんなオヤジ……。
「……すまん」
アーロンがすまなさそうにオヤジに謝った。
向こうをむいていたオヤジが、こっちに振り向いた。十年前と変わらない姿で。
「よぉ」
左手を上げて、俺に呼びかける。
どうかえせばいいかわからず、俺は「ああ」とだけ答えた。
「へっ! 背ばっか伸びてヒョロヒョロじゃねぇか! ちゃんとメシ食ってんのか、ああん?」
十年前と変わらないきつい言い方。でも、今はそれが……とても懐かしかった。あんたは、シンになっても変わらないんだな。
「……でかくなったな」
急に優しくなった口調。俺はもう泣きそうになって下を向いた。またからかわれるからな。そして、言ってやった。
「……まだ、あんたの方がデカイ」
「はっはっは! なんつってもオレは“シン”だからな」
「……笑えないっつーの」
皮肉っぽく笑いながら言うオヤジに、俺は笑いながら返せなかった。
「ははは……」
今度は自嘲の笑いだった。あんたにギャグのセンスはないみたいだ。
「じゃあ、まぁ、なんだ、その……ケリ、つけっか」
頭をかきながらさらっと言う。俺は、何も言えなかった。いや、言いたくなかったのかもしれない。その先を言わせたくなかった。
「オヤジ」
「おお?」
「……ばか」
やっと言えた言葉はこれだった。もっと言いたいことがたくさんあったけど、この一言しかでてこなかった。オヤジの前では……。
「はははは……。それでいいさ」
優しいオヤジ。変えられない運命。どうすることもできない自分が……嫌だった。
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