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ある日のこと、太子が外で遊んで──もとい、外でブラブラしていると(あ、言い直さなくてよかったや)、一匹の犬と出会った。
「さーて今日は何しようかな~……ん?」
その仔犬は道のはしっこで丸まっていた。
犬が大好きな太子は無視することができず、その仔犬を朝廷に持って帰ってきた。
「馬子さん馬子さん! 見てくださいよ、可愛い仔犬を拾ってきちゃいましたよ!」
「朝廷内はペット禁止だぞ、太子」
「ええっ! 初めて聞きましたけど」
「そりゃ今決めたからな」
朝廷内で飼うのを駄目と言われ、しかたなくそこらへんの原っぱに来た。
「なんでソロモンはあんなところにいたんだ?」
仔犬を膝にのせて語りかける。ソロモンとは仔犬の名前のようだ。ま、答えてくれるわけもなく、太子の独り言になった。
カレー臭い彼だがなぜか犬には好かれるようだ。その証拠にソロモンは太子の膝から逃げようとはしなかった。
「ソロモン、お手。って、いたたたたたた!」
相変わらずお手と言うと目にされているが。
「なんで朝廷で飼っちゃ駄目なんだ? 馬子さん犬嫌いだっけ」
「理由を教えてあげましょうか?」
太子の独り言に答える声がし、体を起こしてその方向にむくと──
「妹子!」
太子の唯一の親友(妹子は思ってないが)小野妹子がそこにたっていた。
「太子がいるせいで朝廷はカレー臭いのに、さらに犬臭くなるのは耐えられないみたいですよ」
さらりと酷いことを言って、太子の隣に座る。
その言葉を聞いてソロモンを抱きかかえ、落ち込んだ。
「くそう……、私は聖徳太子なんだぞぉ……」
「そんな落ち込まないでください、太子」
自分が原因だが、励ましてあげるところが妹子の優しいところだった。
「朝廷で飼えないならどこで飼おうかなぁ。あ、妹子の家とかどう?」
「え~、正直あんまり飼いたくないです。そんなに犬好きじゃないし、小野デラックスもいますしね」
「キッパリ言うね。でもソロモンが可哀想じゃないか! これは命令だ! 飼え! 妹子!」
ソロモンを妹子の顔に押し付け、無理を言う太子。
「ムギュ~~~」と言いながら太子のまぶたを引っ張る妹子。
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