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はぁ。このダメ男はいつになったらスランプを抜け出せるのだろうか……。
今まで僕が根性を叩き直してやろうと色々やってきたが、相変わらず俳句は五・七・五になってないし、見捨てればましになると思ったが変わらない。
これは、もう根本的なところを変えなければいけないんじゃないだろうか。脳とか。
ま、そんなことが無理だからDVで教えてやってんのに、このダメ男はちっとも気づかない。
さて、どうしたものかな。
「曽良君、さっきから私の顔をみてるけど、なんかついてる?」
「ええ、疫病神的なものが」
「ええっ! じゃあ追っ払ってよ!」
「それが出来ないから苦労してんですよ、芭蕉さん」
冗談で言ってみたが、もしかしたら本当に憑いているかもしれないな。バカの神とか色々。
「あ、曽良君。一句できたから聞いて。
足の裏
そろそろ痛く
なってきた 芭蕉
どうどう? 芭蕉渾身の力作は」
…………。さて、どう返してやろうかな。ハサミで切り刻むのもいいが、僕はビンタの方が好きだ。
「ねぇ! どうよ曽良君!」
「この……ダメ男がっ!」
迷ったあげく、僕はビンタを芭蕉さんに繰り出した。「あべしっ」と言ってビターンと地面に倒れる。
全く、もっとましな俳句は作れないんですか?
……にしても全然起きあがってこない、まだ地面に倒れている。いつもなら「ごめんよ、曽良君」か「師匠に向かってなにすんの」とか声がするのに。
よくみてみると、打ち所が悪かったのか気絶していた。ちっ、めんどくさい。が、このままほって置いとくわけにもいかないから、足を持って宿屋まで引きずった。
近くに町をみつけ宿屋に運ぶ。店員に変な目で見られたが、気にしない。部屋に芭蕉さんをいれて、僕はお茶でも飲んどくことにした。
「……う~ん……」
どうやらやっと起きたようだ。全く、この人はのんきだから困る。ま、僕もゆっくりできたから別にいいけど。
「やっとお目覚めですか、芭蕉さん」
「…………えっと、君、誰……だっけ? ってか、私って……誰だっけ?」
「…………は?」
つい口にだしてしまった。何を言っているのだろう、この人は。まるで記憶喪失みたいな事を。
…………まさか。本当に記憶喪失にでもなったのだろうか。だとすると、物凄くめんどくさい。
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