Kiss me?

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「ハッピーバレンタイン!店長さん!」 今日はバレンタインデー。 「これ、貰ってもいいんですか?」 「もちろん」 「わぁ、ありがとうございます」 今日、繰り返し繰り返す、一連の言葉。 「ホットチョコレート、いかがですか?サービスです」 俺のカフェは女性客で賑わう。 そのほとんどがチョコレートを持ってやってくる。 もちろん、誰かに渡す為。 ま、だいたいの人は俺に、だけど… 「店長さん、お店終わった後、予定あるの?一緒にご飯食べに行かない?」 「すみません、この後はちょっと…」 「あ、やっぱり彼女いるのね?」 「彼女なんていませんってば」 チョコは嫌いじゃない。 でも、好きな人以外から貰うチョコなんて、スーパーで売ってる100円の板チョコと何等かわらない。 それなのに、それなのに…ッ! 「うわ!雪都さん、そんなに貰ったの?」 店が終わった後、自分の部屋で渡されたチョコの包みを開けてみた。 「すごいねぇ」 「やるよ、欲しいなら、俺の分全部やる」 恋人兼アルバイトの歩。 すごいなんて言われたのがムカついて、睨んでやった。 「……雪都さん、まだ今朝のこと怒ってるの?」 「………」 当たり前だ。 だって、ありえないだろう? 歩が俺にチョコを用意してないなんて。 「バレンタインって女の子がチョコを渡すでしょ?俺、男だし、別にいいかなって…」 「うるせ!外国じゃ男から女に渡すんだよ!」 「それにしたって雪都さんは女じゃないし…」 だって、少しだけ、本当に少しだけ…期待してたんだ。 何くれるのかなとか… 「てゆーか、雪都さんが俺にくれてもいいわけでしょ?雪都さん、女役な訳だし、そっちのが普通…?」 「男がバレンタイン前にチョコなんて買いに行けるか」 「えぇ?じゃあ俺は?」 「おまえは作れよ」 眼の前のチョコレートの甘い匂い。 チョコの包みを一つ取って、その中に入っている手紙を取り出す。
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