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「『前にお店で見て、気になっちゃいました。よければ友達になってください』」
何が友達だ。
思いっきり下心丸出しのくせして。
「手紙まで入ってんの?すごいね、雪都さん」
「コレ、おまえ宛てだけど」
「えぇ!?」
持っていた手紙と箱を奪われた。
あまりにびっくりしたのか、口をパクパクさせてる。
可愛い奴。
「なっ………なんで!?」
「今日、店入ってキョロキョロしてる客が何人か居て。声かけたらおまえ探してるっつーから、『忙しくて出て来れない』って言った。そしたら渡しといてって言われた」
「べ、別に少しくらい出れただろ!」
「うるせーなー」
わかんないのかよ。
決まってるだろ?嫉妬したんだ。
ガタッ、と歩が立ち上がった。
明らかに怒ってる顔で。
「勝手なことするなよ!」
歩がコートに手をかける。
どうやら帰るらしい。
なんだよ。
チョコ、そんなに欲しかったのか?
どんな子がくれたのか見たかったのか?
俺がいるのに、そんな物…
「…もういい」
俺の呟いた一言で、歩の動きがピタリと止まる。
別に、もういい。
そういえば、今までもバレンタインに良いことがあった事なんて一度もなかった。
今年もそんな風に終わるんだ。
ただ、それだけ。
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