Kiss me?

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「雪都さん…」 近付いてきた手を払い、もぞもぞとベッドの中へ入る。 「帰れよ、チョコ持って帰れ」 俯せになって、枕に顔を埋める。 歩がベッドの横で跪づいた。 「雪都さん、泣いてんの?」 「泣いてなんか…」 あたたかい手が髪を撫でた。 泣いてなんかいない。 だけど、おまえに縋り付きたい。 「ねぇ、雪都さん。貰ったチョコはちゃんと食べなよ?」 「………」 「雪都さん、どーせ毎年捨てちゃうでしょ?」 「……なんで」 別に食べなくったって相手はわかる訳ないし。 面倒臭いし、捨てた方が楽じゃん。 「なんでって…」 「意味無いじゃん、そんなの食べたって」 「…でもさ、ちょっと想像しちゃうんだよね」 「…何を?」 「もし俺が雪都さんに片思いしててさ、チョコあげて捨てられてたら…凄く悲しいなって」 「…………」 優しすぎるんだ、歩は。 だから俺みたいなのが調子に乗る。 歩が俺に片思いなんて、あるわけないのに… 「おまえが俺にチョコくれるならそれも全部食う」 首筋にキスされた。 振り向くと、そっと唇が重なる。 腕を首にまわしてもっと引き寄せようとしたけど、歩が少し顔を上げた。 「怒鳴ったのはごめんね?でも、さっきのはチョコをくれた人に失礼だよ」 「……なぁ…」 「何?」 「その子に会っても、好きになったりしないよな…?」 「なにいってんの」 当たり前じゃんって、またキスされた。 本当はすごく焦ってて不安なんだよ。 眼をはなしたら、すぐに失くなってしまいそうで、怖いんだ。 「んっ…」 歩のキスは時に苦く… それでいてひどく甘い。 「あゆむ…」 甘ったるい。 甘美なキス。 欲望は尽きない。 求める、甘い蜜のような想い。 「ねぇ、明日、一緒にチョコレートケーキ作ろっか?」 「ん……もっと…」 チョコレートなんかより、甘い。 とけてしまいそう。 とけてしまいたい。 とけあいたい。 だから、今はキスをやめないで。 End
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