地球へ

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果てしなく広い暗闇の宇宙――。 その宇宙で、地球からだいぶ離れた地球と似る星がある。 星の名前はユグムント。 そして今、ユグムントの王室で親子が話し合っていた――。 「ちょ、おま、取り敢えず地球に下僕作ってこいよ」 黒くてそこら中から棘の飛び出した王座に座る王は突然言った。 周りはベージュ系の明るい壁、灯りも似たような色を放っていた。 王座の直線上には赤いカーペットがしかれている。 「ダルいから嫌ですお父様」 突然呼び出された娘は父の命令(?)を当然のように却下する。 「いやいや、お父さんの言うことは聞けよ。ダンディーなお父さんなら尚更聞けよぅ」 「ダンディーじゃないから聞く必要はありません」 「いやいや、これからダンディーになるんだって。将来有望じゃねぇかよ」 王座に座る王は、最近生やし始めた髭をさする。 最近生やし始めた割には、某眼鏡魔法使いが主人公の映画に出て来る校長先生の髭を三分の二切ったぐらいの長さがある。 「将来どころか一秒先の未来が失望にまみれてます」 「いやいや娘、取り敢えず地球行けって。お前は将来どころか一秒先の未来でこの星を統括する予定だから」 自分の髭の感触にハマった王は髭を両手でさすっている。 娘は見てみぬフリ、いや、それどころか自らの脳内で存在削除を施し始めている。 「それなら、もう私はこの星を統括しています」 「発売延期みたいな感覚だから」 「deathっちまえ」 実の父の存在を消してやろうかと思い始めている娘。 「サーセン。いや、取り敢えずマジで地球行けって。その間王様らしく王みたいなことするから」
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