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この星は統制はとれているが、王が王らしいことをしたという人(?)は少ない。
皆無と言ってもいいだろう。
さらに、この星のことを明記するに当たって、この星の住民を人として言うのは、人という線が曖昧になる。
一般的、いや、人間的に言うならば魔族と言うのがしっくりくるだろう。
例えば、わかりやすいのは、『耳』。
よく地球のゲームで異世界人等の耳は先が尖っていたりする。
人間の妄想は的を得ていた。
この星の魔族達の半分程は耳が尖っている。
ちなみに、王の耳は尖っていない。
「だいたい、地球に行ってなにをしろというのですか……?」
「さっき言ったで生姜よ。下僕作ってこいって」
王のギャグセンスのボキャブラリーは少ない。
たいした突っ込み役もいないので、単なる一人走りなアホということになる。
「私が聞きたいのは『下僕を作ってどうするのか』です」
娘はいまだ王の顔を見ない。
見て、まだ髭を触っていたら多分殺るからだ。
「そりゃあお前、魔力を増幅させるんだよ」
ちなみに、王はいまだ髭を両手でさすっている。
「どうやってですか?」
王はさするのをやめて一息おく。
「loveな行為をして」
暖かい王室に冬が来た。
長い沈黙が流れる――。
声を出したのは王の娘からだった。
「いや、なにloveとかほざいてるんですか。あなたloveの欠片というか微生物程もないですからね」
王は悲しみのあまり自らの髭を一本抜いた。
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