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「ただいま」
俺の声が家の中を駆け巡った。
返事は返ってこない。
まぁ当たり前だ。
なんせ一人で暮らしているのだから。
俺はため息をつき、フローリングの廊下を歩いた。
廊下を出ればすぐにリビングに出る。
相変わらず、一人で住むにはだだっ広い家だ。
いやに広いリビングに、無駄に力の入ったエクステリアの数々。
流石はテレビに取り上げられるほどの超高層マンションなだけはある。
「…………手紙、か」
リビングの中心近くに位置するガラステーブルの上に、一通の手紙が置いてあった。
父さんからだ。
手紙の封筒にわざわざ俺のフルネームを書くのは父さんぐらいしかいない。
『東方院 紅魔』
俺の名前だ。
とうほういん こうま。
長い名前な上に無駄にカッコいい。
『深夜0時にこい』
これが手紙の内容。
なんとも短い手紙であろうか。
これぐらいのことは電話で伝えればいいのに。
「…………余計な詮索はするなっていうことか…」
電話で探りを入れられるのを拒んだだけか。
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