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「へぇ、何に気付かなかったのよ?」 「猫よ、子猫。タクシーに乗った時からずっと、後部座席の足元にいるのに運転手さん、全然気付かなくて」 私、猫を飼ってるって勘違いされたのよ。と、牛乳を小皿に注ぎながら女は笑い続けている。 「あなた、猫が苦手なのにねぇ」 「あら。意外と可愛いわよ。ほら、おいで」 みゃあ。みゃあ。 女が小皿を床に置くと、先程の子猫が玄関から入って来た。 「でも、あの運転手さんは絶対に猫嫌いよ」 美味しそうに牛乳を舐める子猫を見ながら、女は悪戯っ子のような笑みを浮かべた。 「この子が鳴くたびにビックリしてたし…」 なにしろ山道の途中で、この子を見せた時の絶叫。あれはまるで、化け猫でも見たかのような凄まじさであった。 おしまい
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