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ここは○×町のはずれにある小さな民家。 玄関の戸が開いた。 「ただいま~」 と家に入ってきたのは、水色のワンピースに長い髪の女性。 「あら、早かったのね」 台所には食事の支度をしてる母親がいた。 「うん。山の裏道を通って来たから」 女は靴を脱いで台所に向かうと冷蔵庫を開けた。 「あなた、なんか臭わない?」 「あぁ、この臭い?…ちょっと聞いてよ、お母さん」 牛乳を片手に、女はクスクスと笑った。 「今日乗ったタクシーの運転手さん、すごい天然なのよ」 「へぇ。あなたに言われるんなら、よっぽどね」 あなたの天然ぶりも、たいした物よ。と母親が笑う。 「その人ね、なんか全然気付かないから、笑いを我慢するのに、もう必死で」 そこまで言うと、今度はケラケラと笑い出した。 「きっと息子さんが隠したのに、ずっと気付かないで運転してたのよ」 そういえば、あの車、息子の秘密基地になってるとか言っていた。
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