女王様は独り

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  「やだね。本っ当に今度こそお手上げ。アイツの性格を直させるんだな」 ページを捲りながら低音を出すと、思ったより低い声が出て内心驚く。そして柚理香の残念そうな声量が降ってきた。 「じゃあ避けないで、せめて恵理香と普通に接してあげて」 俺が顔を上げると、柚理香は苦笑いを作る。 柚理香の恵理香に対する思いと、気を遣った表情に負けた。 「……分かったよ」 溜め息を吐きながら本を閉じ、元あった場所に戻して仰々しい図書室を出る。 「萩くんっ!」 図書室から柚理香が俺の隣へと走って来る。 「ありがと」 柚理香が嬉しそうに笑ったので、俺もつられたのと、照れくさいのとで誤魔化すように笑った。  
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