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「うるさいっ! なんでいっつも柚理だけ幸せなの!? なんで私には幸せが来ないのっ!?」
恵理香が柚理香の手を乱暴に払い退け立ち上がった。
その反動で、恵理香が膝の上に置いていた分厚い本が、大きな音を立てて床に落ちる。
「うっせぇぞ、お前らぁ」
俺がいつもの喧嘩だと思い、間抜け声と共に部屋へ入って行くと、予想以上に緊迫した空間に響いた。
その声を気にせず恵理香が今にも殴り掛かりそうな顔をして、柚理香を睨む。
一方柚理香は、悲しみに歪んだ顔をして恵理香を見据えていた。
「おい……何やってんだよ」
俺が止めに入ろうと恵理香に近寄る。
すると恵理香は俺の横を通り過ぎ、部屋を出て行ってしまった。
「……はぁ」
恵理香が部屋から見えなくなった瞬間、柚理香が床にしゃがみ込んだ。
俺はゆっくり近寄り、頭の後ろで手を組んで溜め息を吐く。
「何、また喧嘩」
「……いつものとは違うかな……」
「取り敢えずこっち座れよ。聞いてやる」
「うん……」
窓際から少し離れて、恵理香が座っていたチェアとセットのアンティーク調のテーブルのチェアを引く。
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