女王様は独り

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  「恵理……やっぱここか」 俺が柚理香の居た部屋を離れて真っ先に向かった部屋は、宝城家一階の玄関から一番遠い部屋。 双子の、父方の祖父が使っていた古書などが置いてある書斎だった。 この部屋を出入りするのは読書家の恵理香しかいない。 そして、恵理香が一人になりたい時にもこの書斎に閉じこもる。 「……入って来ないでよ。出てって」 幾つもある本棚の中の、一番窓寄りにある本棚の影に足を抱えて蹲っていた。 恵理香が俺の足音に気が付き、震える声で抵抗する。俺はそれに返答もせず、ゆっくり恵理香に近付いていく。 「出てって! 私の命令よ!」 「恵理、聞け」 「うるさいっ! 萩なんか要らないっ! 柚理香なんか大っ嫌い!!」 腕を掴みながら突っ伏したまま恵理香は叫ぶ。俺は無表情のまま、一歩一歩緊迫した空気を掻き分けて恵理香に近付いていく。 「恵理香。お前は一人じゃねぇよ。大事な妹の柚理香が居んだろ」 「私がちょっと先に産まれただけ!! アレは私の分身と一緒!」 「恵理!!」  
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