一人のペットと二人の女王様

女王様は独り

自分の思ってもいない事を口にし、怒りに任せて口を突いて出たものだとしても、素直じゃない恵理香が許せなかった。

そして一人で小さくなっている【恵理香】を――……。

「【柚理香】は【恵理香】の分身じゃねぇ！　“柚理”は“柚理”で“お前”は“お前”だ！！」

恵理香の細い腕を掴んで立ち上がらせ、顔がちゃんと見れる様に両手で包む。

恵理香の、涙のせいでいつもよりか弱く、何かに脅えていても、まだ強気な瞳をしっかりと捕らえる。

「お前には、家族だって友達だって居んだろ。昔の事を今も引きずるな」

恵理香の強気と怒りで燃えていた瞳に涙が浮かび、頬を伝った。
俺の手にも流れる雫。

その弱くて、何時も泣いている【恵理香】を――……。

「アンタなんかに分かんないよ！　一人がどれだけ寂しいか！　柚理香はクラス違うし！　頼りたい時に、誰も傍に居てくれない！！　アンタなんかっにっ……」

恵理香が顔を歪めて精一杯反抗していたが、言葉の途中で俺が自分の胸に抱き寄せた。
壊れてしまわないように優しく、逃げてしまわないように強く。

見てられなかったんだよ。

柚理香に対しての想いが複雑で、色んな事が恐怖だったりするんじゃないのか。

【恵理香】の眼が泣いていた。

「分かんねぇよ。分かんねぇ……。だから、話して。いつでもいいから」

自分の胸にしがみついて、声を殺して泣いている恵理香の頭を優しく撫でながら、安心させるように呟く。

「……くっ……う゛～……」

恵理香の頭が微かに頷いた気がして、聞こえぬ程度の、安堵の溜め息を吐く。