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「「母さん!」」
双子が勢い良く部屋のドアを開け、その人物の名を呼んだ。
「おじゃましてます」
「いらっしゃい! あ、ケーキ買って来たの。皆で食べてねー。萩くんには後で、瑠美さん達の分渡すわね!」
双子の母は俺に微笑み掛けて、鼻歌を歌いながらリビングへと降りていった。
「「ケーキだって!」」
双子が顔を見合わせ、目を輝かせる。
だが、顔を見合わせたと同時に、柚理香がすかさずツッコミを入れる。
「てか恵理、さっきドーナツ食べたじゃない」
柚理香が眉間に皺を寄せ、恵理香を凝視する。
「お腹減ったもーん」
すると恵理香は柚理香の視線から逃げる様に、そそくさとリビングへ向かった。
恵理香の後ろ姿を見ている柚理香の表情は、【恵理香】以外には決して向けない、穏やかだった。
「萩くん、ありがとっ」
「うん、どういたしまして」
俺の方を振り返り、【恵理香】以外に向ける笑顔を咲かせた。
残された俺と柚理香は、恵理香のいつも通りになった様子を見、安堵の笑みを浮かべる。
恵理香の後を追い掛けながら、いつもの幼なじみ三人に戻るように――……。
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