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「恵理ちゃん、ただいま」
親父が恵理香に笑いかければ、心底嬉しそうな顔をした。
「柚理ちゃんは?」
「萩の部屋に居ます」
「おじ様っ」
今度は柚理香が手すりから乗り出したので、慌てて降ろさせる。
柚理香は駆け足で階段を降り、恵理香の横に立つ。
「お帰りなさい」
「親父、コイツら出入り禁止にしてくれよ」
にこやかに笑う双子の後ろで、パーカーのポケットに手を突っ込み、面倒くさそうに頭を掻く俺。
「何故だ?」
「うっさいから」
「女の子はみんな賑やかじゃないか、なぁ?」
父が双子の恐ろしさを知らないのも無理ないか。
猫を被ってゴロニャン言ってる二人しか、知らないのだからな……。
「おば様なら、お台所に」
「おじ様、荷物お持ちします」
「ありがとう」
双子と親父が階段を上っていくのをメイドと共に見送りながら、どうやったらそんなに長い間猫が被れるのか、と考えていた。
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