8人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
攻防を見守る事三〇秒。
花形は惨敗。あの可愛いいお嬢さんは、花形の頬に平手を打ち込み、さらに彼が怯んだところで足払いをかます。さらにさらに、地面に横たわる花形めがけてカカト落としの洗礼を浴びせ、止めに額にマジックで『肉』と大書されてしまった。
「あ~あ。かわいそ」
と俺。俺でも認めている花形の美顔が、今では見る陰もなく季節外れの紅葉が浮いている。
「てか、どういう風にしたらああなるんだ?」
と大木。確かに、普通にナンパしただけなら軽く退かれてそれで終わりだろう。しかし、なれほどまでにひどい仕打をされるということは、セクハラまがいの口説き文句をしたのだろう。花形の馬鹿さ加減が完全に裏目に出てしまった。
「ったく、俺ら振り回してぶっ倒れるとは世話ねぇな。俺帰る」
「大木。待てよ」
俺はひき止めにかかる。
「帰るよ俺。予備校の宿題しなきゃなんねーし。それにいつまでも花形に付き合うのもさ」
「……。確かに」
「あ。あれ見て」
『ん?』
これまで一言も喋らなかった土田が口を開いた。彼が指差す方向を見ると、そこでは信じがたい光景が演じられていた。
最初のコメントを投稿しよう!