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奇跡
「あの、大丈夫ですか?」
良く通る澄んだ声は、遠くからでもはっきり聞き取れた。
「ふぁい……」
間抜けな返事をする花形。そんな花形は、すぐに目を覚ます事になる。
「え、うそ」
花形は見たのだ。
倒れる花形を上から覗きみる形でしゃがみこむ少女。年のほどは、俺たちと同じがそれよりも下。長い黒髪はとても滑らかに太陽光を反射し、艶やかに黒光している。目鼻立ちはこれでもか、という位整っていて、モデルか女優にさえ引けをとらないだろう。
ただ、ひとつ。全く文句のつけようのない彼女に、ただひとつ、腑に落ちない点があったのだ。
「何で、ジャージなの?」
俺の気持ちを代弁するかのように、花形が彼女に聞いたのだった。
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