遡る記憶~誠意の過ち~

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男は静脈認証機に手首をかざし、ドアを見つめていた。 ウィィーン… 大きなドアがスライドして開く。その機械的なドアとは対称的に中はコンクリート剥き出しの粗雑な、天井の低い部屋のようだった。 力なくうなだれるリリスを引きずりながら男は足を進める。 中に入ると、悪臭が一層強くリリスの鼻を刺激した。 堪えきれず手で口を塞ぐ。 『…うっ…うぐ、ゴホッ…』 胃の中の物がボタボタと押さえた手からこぼれていく。
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