第一章‡サクラ マホウ

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暫く歩いた私は、ある施設へ差し掛かった。 門のような扉の横には立派な銅に「市立姫崎高等学校」と彫刻されている。 その門の奥に見えるのは綺麗な白が基調の校舎だ。 「ここが姫崎高校・・」 私は今日で二度目の感嘆をした。 何を隠そう私はこの学校の生徒になるのだから。 「なるのだから」と未来進行形で言ったのには理由がある。 それは”転校”だ。 私、唯一の肉親である母親は唐突にも海外への転勤になったのだ。 戸惑っていた私に母親から告げられた事は”姫崎街に住む従姉妹宅でお世話になる事”そして、”姫崎高校への転校”だった。 そして、最後に聞いた母の言葉は”おやすみ”。 その次の日には朝食と姫崎へ滞在する従姉妹宅の地図だけがテーブルに残されていただけ。 正直、私は母親に対して初めて”憎しみ”と言う言葉を思い浮かべた。 まだ16歳の私を・・ 姫崎街など知らない私を・・ 知らない従姉妹の家に・・・ 無責任極まり無い。 その一言だ。 しかし、この姫崎街がここまで美しい街だったとは想定外だった。 そこだけは前にいた街より勝っている場所・・
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