第1章 暁の晩

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目が覚めるとまず白い天井が目に入った。何回かまばたきをした後、彼は自己確認をした。『良かった。オレはまだ生きている!』彼は上体を起こして辺りを見回した。当たり前だが病院だった。起き上がろうとしたがそのとたんに腹部に鈍い痛みを覚えた。まだ完璧にふさがっていないらしい。彼は再び横になり頭の中で考え出した。『オレはあのあとどうして病院にはこばれたのか?更夜はどうなったのか?あの変態の義父は?警察にはもうバレたのだろうか?』次から次へと疑問が沸いてくる。しかしその度に深く入り混じった負の感情がそれを消し去っていった。結局何も分からないのだ。だが、ひとつはっきりしている事がある。それはもうあの地獄の日々からは解放されたとゆうことだった。そう思うと何事にもかえがたいほどの歓喜が胸を打った。思わず笑みがこぼれる。『やった…ようやくあの日々から…』しかし『あの日々』を思い出してしまい再び彼の顔から笑みが消えた。そう、あの日々、正確には生まれてから数日前までの家庭の日常。オレと母、そして更夜と義父の歪んだ肉体関係。俺達二人は生まれてからずっと性的虐待を受け続けて来た。自分達の異様な家族関係を母がいなくたった今、彼は再び思い出し始めた。
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