風ガ運ブモノ

3/5

125人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
フェンスを乗り越えた私達は、昇降口に向かった。 校庭は真っ暗で、普段見慣れている朝礼台や植木も不気味に見える。校舎はまるで巨大な怪物だった。 となりを歩く梨子、瞳、優奈さえも別人に見える。振り返れば紅い血の涙を流す女がいるような気がした。 風が吹き涼しいはずなのに、背中はじっとりと濡れていた。 フウッ。と息を吐く。 怖ければ怖い程、日頃のつまらなさを忘れて興奮していく。そしてそれはおそらく私だけではないと思った。 昇降口は避難口の緑色の光が妖しく光っているだけで、鍵は閉まっていた。 「まぁ、閉まってるわな。それじゃあ一階の廊下から入ろうか。」 梨子が言い、反対方向に進む。昼のうちに一階の廊下の窓の鍵を開けておいたのだ。 何となく喋ってはいけない気がして、歩いている間は誰も口を開かなかった。 やがて鍵を開けておいた窓を開き、学校の中に忍び込む。 梨子、優奈、瞳の順で窓から入っていく。 私が入り窓を閉めようとした時、かなり強い風が吹いた。窓から入り込んで私の頬を殴る。 「ちょっ…真帆~!!早く窓閉めて!!」 風で髪が乱れた梨子が怒ったように言った。 スッと窓を閉め、歩き始めた私の後ろに、今度は本当に紅い涙を流す女がいるような気がした。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加