7063人が本棚に入れています
本棚に追加
チラ、と視界の隅に引っかかった。
獅ノ介は、一之瀬従者――ふたばとして、美化点検をしていた。
小説に出てくるような意地悪い姑みたいで嫌だが、仕事だからしかたない。この島にはもっともっと嫌な仕事が山ほどある。
というか、嫌な仕事しかない。
そもそも仕事は嫌いだし、楽しいなんて思ったことは一度もないし、などと考えながら、掃除が行き届いていない箇所よりも、サボるに最適な場所を探しているときだった。
――視界の隅に、いやぁあなモノが引っかかったのは。
獅ノ介であっても意識すれば認識できるが、そうでなければ素通りしてしまう、あってないような存在感がそこにあった。
そんな最大限まで希釈された存在は、獅ノ介が第三候補として挙げながらも、今日は零くんがいるからなー、と却下しようとしていた場所、蔵の影と一体化している。
脱力を伴う苛立ちが、むくむくと大きくなる。
毎度毎度あんのバカは。
もう面倒だから、いっそ勢いあまったふりして殺っちゃおうか。
あーでも、言ってもやつは第三位だし、上からなんやかんや文句言われ――ねーなっ!
なんつうかもう父上と零くんから感謝状きちゃうなコレ!
最初のコメントを投稿しよう!