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零は、ぎっと歯を食いしばって、眉間に力を入れた。
――よかった。
「え?」
小首を傾げる皇士郎から目を逸らして立ち上がった。羽織りを翻し、くるり背を向けた。
「次はないぞ。俺の手を煩わすな」
「はい……」
しょんぼりと俯く皇士郎を見て、彼女はガッと腕をまくった。
「なによアレ!」
私が成敗してくれるわ! と、零に突撃しようとする彼女の腕を獅ノ介が掴んだ。
「おやめなさいな」
ふたばモードである。敬語を使わないあたり、彼女に腹を立てているのか全開ではないようだ。
「ちょっと、離してよ! ガツンと言わなきゃ気が済まない! 何よ『俺たちの領分って』! あんたたち、こんなふうにされて育ってきたわけ?」
「まさか」獅ノ介はため息をつく。「親に手を上げられたことなんて、一度だってないよ」
「じゃあ、どうし――」
「どうして? 零くんは自分がしてもらいたかったことを必死にしようとしてる、それだけだ」
はあ? と彼女は顔を歪め、は! と何かに気づいた。
「ま、まさか、零ちゃんって……そういう性癖?」
「そっち!?」
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