名も無き花

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 なんで早く教えてくれなったの、と、知ってたらもっと色々あーしたりこーしたり……、と右往左往する彼女に、 「なんで君はいつもそうなるんだよ! ホントに女か!」 「年上としてのプライドよ! そこだけは負けたくないんだから!」 「そこだけは負けてあげて! お願いだから、男のプライド折らないであげて!」  叫んで、じーっと見つめる5対の幼い視線に気づき、咳払いをする。 「とにかくですね、親に殴られたことなどないのです」ふたばモード全開。「悪さ戒めるのに鞭を握るのは最下従者の役目。修行でもない限り従者が上十家に手をあげるのは罪ですから、打ったあとその従者はもちろん殺します」 「なに……それ……」 「『おまえがなっていないから、この者は死んだ。おまえのせいで死んだのだ』私とて何度言われたか知れません」  獅ノ介は周りを見回す。 「旦那様もそう、三代橋御当主様もそう。そうしなければ私たちは生きていけないと、体を生かす為に心を殺せと、先人たちは口を揃えて言うのです」  は、と彼女は息を吸った。 「精神がまともであっては、人殺しなどなせないのです。 それなのに、旦那様はこどもたちにそれをさせず、ご自分のたなごころで、わからせようと必死なんですね」  獅ノ介は、ふたばの顔で、にこりと笑った。 「旦那様は、あなたに頬を打たれたことが余程嬉しかったのでしょう」 「零ちゃん……」彼女は口元に手をあてて、零の背中を見つめた。「……やっぱりマz」 「アレ今の聞いてた!?」
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