名も無き花

28/29

7063人が本棚に入れています
本棚に追加
/302ページ
「皇ちゃん、こっちむいて……」彼女は皇士郎の頬に手を寄せた。「こんなに腫れて。痛む?」 「口を出すなと申し――」 「こっからは私の領分よ! 口出さないで!」  と一蹴。というか、もはや半蹴。  ううっ、しのくん、俺の威厳って……。よしよし惚れる女を間違えたねよし殺そう。なんでっ!? という構図が庭に隅で出来上がる。 「ほら、あや」鷹遠は抱き上げていた愛娘を下ろす。「大好きなこうたんとこ行ってきなァ」  名残惜しそうに見上げるあやに、くいっと皇士郎に向けて顎をしゃくると、ぱっと顔が明るくなる。 「こうたぁあああああん、すきぃいいい!! いたいのいたいのとんでげぶっ」 「うわっ! なんもないところで転ぶな……」 「あぁあああああん」 「って、な、泣くな! ほら、どこが痛いんだ? 見てやるから起き――そんなにくっついたら見れんだろ!」  
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7063人が本棚に入れています
本棚に追加