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行く宛は、決まってた。
偶然を装ったけど、本当は、玄関出た瞬間に決めてたんだ。
学校のヤツらは蔑んだ目ぇして噂してた。先生は偏見を込めて近づくなと言った。家では話題にすらのぼらなかった。
実際、別世界の人間だと思ってた。
繁華街の危ない裏路地で、夜遅くまでたむろしている危ない小学生。同級生の両親を半殺しにしたイカれた子供。
笑っちゃうよね。
自分の子供をなんとか俺の友達にさせようと躍起になっていた上品で下品なババア連中は、少年ヤクザとか少年ギャングとか呼んでたんだぜ。
そのネーミングセンスだから、子供に果物の名前なんかつけちゃうの。
その、噂通りの場所に、いた。
もっと探すかなって思ったけど、虫がたかる電灯の下案外あっさり見つかった。
最初から、利用するために近づいたんだ、って言ったら、なんて言うかな。
ざけんなって怒るかな。それとも、今更って呆れるかな。
どっちにしても、その後は何事もなかったかのように、変わらず俺を受け入れてくれるだろう。
なあ、薫。
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