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「なあ! 薫って呼んでいい?」
「好きに呼べば」
「じゃあ、かおるん!」
「はあ!?」
「好きに呼べって言ったの、かおるんじゃん」
「おまえなあ……」
「おまえじゃなくて、たすくだよ! かおるん、あのさ!」
すごく嬉しかったのを覚えてる。
毎日顔を合わせてたクラスメイトも友達だと思えなかったのに、悪い評判しかない薫と友達になれたような気がして、よくわからところから興奮が噴きだしてた。
「あのさあのさ、なんで金髪なの?」
薫は複雑な顔で、少し眉をひそめた。ちょっとヤバイって思って黙っていると、ややあって、薫が俺のランドセルを指さした。
「地毛、こういう色」
薄いベージュ。
歩きながら、首をかしげていると、薫が小さく笑った。俺の知ってるどの大人よりも大人っぽい微笑みだった。
「そ、染める意味ないじゃん」
「だったらいいんだけどな」
そう言うだけで、ちゃんとした理由は教えてくれない。
かと思えば、
「ねえ、どうして、こんな夜遅くにあんなところに集まってるの?」
「夜、ひとりで家にいるのが怖いんだよ」
『怖い』って、ちょっと恥ずかしい単語をなんの照れもなく使って、簡潔に説明する。
へんなやつ。
ほんと、へんなやつだなーって思ったよね。
薫と話してると、やなことが遠くにいっちゃうんだから。
今でもそうだよ。
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