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絶対飯食うところじゃないテーブルに、おかずがずらっと並んでる。だって、テーブルの真ん前にテレビがあるし。掃除機と本棚が隣同士ってナニゴト。
「帰るとこがない? って、キミその格好……」きらたんサンは、しばし考え、「難しい話はあとあと! 腹が減っては戦はできぬってね。お腹すいたでしょう?」
きらたんサンは腰をかがめ、俺の目線に合わせて「ごはんにしよ」と、ニコリと笑った。ホッとする笑顔だった。
「コルァ、薫! つまみぐいしてねぇで、味噌汁火ぃつけて飯よそれ!」
「るせぇな! いちいち怒鳴んじゃねえよ! 時間考えろ! 近所迷惑だろうが!」
間違いなく、異世界だった。
俺は、ふたりのやりとりを見て笑ってたんだから。
異世界なのに、俺が今まで生きていた現実より、不思議とリアルだった。
なにがしたいのかしたくないのか、考えることを放棄して、ひたすら勉強だけを頭につめこんでた、ぼやーっとした日々よりも。
お母さんと秘書がセックスしてて、のどかをボッコボコにして、家を出てきたことよりも、ずっと現実的だった。
だってふたりは生きてる、って気がする。
褒められた生活環境じゃないだろうけ
ど、精一杯生きてる。死にもの狂いで生きてる。生きるために生きてる。
午前3時、青白い蛍光灯の下、薫ときらたんサンは、生きてて悪いかって叫びあってた。
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