ファンク!

18/73
前へ
/302ページ
次へ
 賑やかな声で目が覚めた。  瞬間、凝縮に凝縮を重ねた映像が、ぶわっと頭をめぐった。それは最高速のスライドショーのようで、もしかしたら走馬灯ってこんな感じなのかな、と思うような“光景”だった。  それらひとつひとつ全てが同時に認識でき、同時に状況把握する。  はじめての感覚だった。けれども、ずっとずっと前から、こうだったかのような、とても自然な感覚だった。  だから、気に留めることもなく、天井のどっかの大陸みたいなシミをぼんやりと眺めながら、これからについて考えた。  そんなの、いくら考えたところで思い浮かぶはずがないよね。だって、それまで、自分のことなんて考えたことなかったんだもん。  じゃあ、今まで俺は何を考えて生きてきたんだろう。  何も考えてない、ってわかりきった答えが弾き出されるより先に、視線を逸らした。  隣にしいてある布団は、余韻だけ残して、空っぽだった。 「あーもう、うっせえな! 自分家で飯食え!」  薄っぺらい引き戸の向こうから、薫の声が聞こえた。  足を上げて、ふん、と下げる反動で起き上がる。  自分が寝ていた布団を畳んで押入れにしまい、ちょっ と考えてから、薫の布団も畳んでしまってあげた。 「よし!」  おはようございますって言おう。  それから、昨日はありがとうございましたって言おう。  それから、それから……。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7063人が本棚に入れています
本棚に追加