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賑やかな声で目が覚めた。
瞬間、凝縮に凝縮を重ねた映像が、ぶわっと頭をめぐった。それは最高速のスライドショーのようで、もしかしたら走馬灯ってこんな感じなのかな、と思うような“光景”だった。
それらひとつひとつ全てが同時に認識でき、同時に状況把握する。
はじめての感覚だった。けれども、ずっとずっと前から、こうだったかのような、とても自然な感覚だった。
だから、気に留めることもなく、天井のどっかの大陸みたいなシミをぼんやりと眺めながら、これからについて考えた。
そんなの、いくら考えたところで思い浮かぶはずがないよね。だって、それまで、自分のことなんて考えたことなかったんだもん。
じゃあ、今まで俺は何を考えて生きてきたんだろう。
何も考えてない、ってわかりきった答えが弾き出されるより先に、視線を逸らした。
隣にしいてある布団は、余韻だけ残して、空っぽだった。
「あーもう、うっせえな! 自分家で飯食え!」
薄っぺらい引き戸の向こうから、薫の声が聞こえた。
足を上げて、ふん、と下げる反動で起き上がる。
自分が寝ていた布団を畳んで押入れにしまい、ちょっ
と考えてから、薫の布団も畳んでしまってあげた。
「よし!」
おはようございますって言おう。
それから、昨日はありがとうございましたって言おう。
それから、それから……。
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