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歩いているうちに、ヒデと琴実が合流した。
ふたりの顔を見た瞬間、ぱっと名前を思い出した。
ヒデは、絶対クラスの背の順で一番後ろだろうなっていう薫より、背が高い。だけど、体重は薫よりなさそうだから、デカいっていうより長い。とにかくヒョロ長い。
「へえ。たすくのガッコ、夏休みまでまだ1週間もあんだ」
「うん。ヒデたちはもう夏休みなんだね。いいなあ、転校しようかなあ」
「ずいぶん簡単にいうのな……」
琴実は、その名前の通り、女なんだけど、気を使っていろいろ俺に話を振ってくれるヒデとは正反対で、ガサツって言葉はコイツの為にあるんだなって思った。
「その服、もしや薫の?」
「うん。貸してもらったんだ。動きやすくて気に入っちゃった」
「つーか、それって異常にブカブカなだけじゃね?」
ギャハハって笑うし。
「かわいー! ちょー不満顔ーっ! あ、たすくだったら、あたしの服、あたしより似合いそ! ねー、ヒデ」
……俺、この女、嫌い。
「琴実、んな、からかうなって。たすく、ごめんな」
ヒデはいいやつ。
「なんだよ、もう。ヒデもそう思ってる癖に。いい子ぶってんじゃねーよ、バーカバーカ」
「はあ……。薫からもなんか言ってくれよ」
「るせーぞ、琴実。あんま調子のってっとシバくぞ」
薫がめんどくさそうに睨むと、
「ひゃー、薫がこわーい」
両手を上げて大袈裟に首をすくめた。わざとらしい降参のポーズをする琴実に、薫は小さく笑う。
「バーカ」
そんなやりとりが、なんだかうらやましかった。
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