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「学校って携帯持って来るの禁止だよね?」
突然の声にびっくりして振り返るとA美が居た。学年委員長をやっていて牛乳瓶底の眼鏡を掛けたみつあみ下げた女子。
容姿はさほどでも無いけれど成績は優秀。気真面目なクラスメートだ。
「あ……びっくりした…ちょっとさ帰り寄るとこあって」
あたふたと言い訳しながら立ち去ろうとすると
「なら私が帰りまで預かります」
とA美は手を差し出して来た。
ちょっとムッとしながら
「まぁまぁ…帰りまで使わないから」
「駄目よ。規則は規則だし。私が先生に渡しておくわ。帰りにちゃんと返すように言ってあげる」
「なんで貴女にそんな事されなきゃならないわけ?貴女教師?関係無いじゃん。」
「でも…」
「煩いこの厚底メガネサル!先生にチクったら承知しないから!学年委員長だかなんだかしらないけど命令してんじゃないわよ」
上から目線で物言うA美にかなりムッと来て本音がでてしまった。
(ちょっと言い過ぎたかな………)
私はさっさと携帯を絞まって教室にもどったがA美はまだ立ち止まったままだった。
授業中もA美の視線はちらちらと私の方を見ていた。まるで携帯を使わないか監視しているかのように。牛乳瓶底の眼鏡から覗き込むように。
(あー…もぅ気になって話が頭に入らない…)
なるべくA美の方を見ないようにして残りの授業を終わらせて逃げるように学校を後にした。
「なんで携帯一つでこんな思いしなきゃならないのよ」
なんだか一日の半分を潰されたようで段々怒りが込み上げて来た。
「携帯禁止なのは解ってるけどさ別に授業中に使ってる訳じゃないのにさ…ちょっとメールしてただけじゃん。それも休み時間だし~どうしようと勝手だわよって感じよね」
ぶつぶつ独り言のようにつぶやきながら用事を済ませにとあるコンビニに入った。
もうすぐ夏休みだからバイトしようと先週面接を受けて今日が初日なのだ。
高校生だから夜9時まではバイトが出来るし門限は9時半で歩いて10分足らずの距離だからちょうど良かった。
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