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公園に入れば
ブランコに座った
見覚えのある後ろ姿が見える…
──ドキンッドキンッ…──
また鼓動が早くなる…
柄にもなく足が震えてきた…
自分を落ち着かせるように…そして、決意が揺るがないように、深い深い呼吸をした…。
カバンの中に潜ませた努力の結晶が、今か今かと出番を待っている…。
覚悟を決め、その後ろ姿に声を掛けた…
「よっ!!待たせたな!」
次の瞬間………
あたしの決心は
脆くも崩れ去った───
「おっせぇよ!!待ちくたびれたわ!!」
振り向いた楓の手には、誰かから貰ったのであろう食べ掛けのチョコケーキが握られていた…。
「な…に?それ…」
震えそうな指でケーキを差せば
「あ?これ?
公園来る途中で知らない女の子に貰って…『ガトーなんとか』ってやつらしいけど…
めちゃくちゃ腹が減ってたから早速いただいてたっつー…」
楓が話を中断したのは…
あたしの目から
大粒の涙がこぼれ落ちてきたせいだろうな…
「…お前…何で泣いてんだよ!?」
慌てて立ち上がった楓を心配させたくなかったから、目一杯の嘘をついた…
「…今年も楓のおこぼれ頂戴しようと思ってたのにもう食ってるなんてズルイ!!卑怯だ!!!
一年に一度の楽しみだったのに~~~!!!」
「はぁっ!?んなことぐらいで泣くか!?だいたい、俺が貰ったんだから俺のものだろーが!」
「うっせぇ!!
だってそれ…めちゃくちゃうまそうじゃねーか!!!あたしにも食わせろ!!!」
「うわっ!てめぇ!人のもの勝手に食いやがって!!!」
ピンクの可愛らしいラッピングに包まれたそのケーキは
あたしのと同じガトーショコラとは思えないぐらい綺麗なカタチで…切り口からも粉の固まりなんて見えなくて…もちろん味も美味しくて…
あたしのものなんて比べものにならないくらいの品物だった───
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