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「ほら!父さんからの餞別だ!ありがたく受け取れ。じゃあな!!」
「はぁ?ちょっ…待てよ!!」
餞別が入った袋を叩きつけるように楓に渡すと、あたしは逃げるように公園を走り去った。
自分で思っていた以上に
あたしは弱かったんだ…
覚悟してたはずなのに
あんな完璧なお菓子見たら
ただでさえ無かった自信は
砂のように一息で飛び散って行った…
家に帰り、部屋へ戻ってもう一度あたしのガトーショコラを見てみれば…
「ハハッ…ボロボロ…。
あたしみたいだ…」
走って帰ったせいで、さらにくずれてしまった未熟なそれが、包みの中からこちらを見ていた…。
ひと欠けら取り上げて口に放り込んでみると、パサパサで少し粉っぽく…さっきのものとは同じものでは無いように感じた…。
「…にがっ…。
砂糖の分量間違ったんかな?
あ~よかった…あいつに渡さなくて…」
ビターな味のガトーショコラは、とめどなく流れ落ちる涙のせいで
だんだんと塩っぱくなっていった────。
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