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「烏退治、どうなさるおつもりですか?天子様」
『国家警察初隊軍事歴史書』と、達筆な文字で書かれた本を閉じながらそう言った要は目の前にいる女を見据えていた。
「アレはいつか檻の中に入れねばならねと思うておる。だから叉奈(サナ)をあそこまで教育しておるのじゃ。」
「しかしっ…」
「要はそのようなこと、考えなともよい!」
鋭く言い放つ女の言葉に、はい、と短く答えると要は部屋を出て、部屋を遠ざかった頃、急に廊下の絨毯に腰を下ろした。
「くそっ……急がねぇと先越されちまうじゃねぇかっ」
そう言って少しの間考え込んだような様子だったが、すっと立ち上がって窓の外の世界をその焦りを含んだ緑石色の瞳に焼き付けていた。
窓から見える淀んだ海にたゆたう島。
それはただ血生臭さを含んだ潮風を屋敷まで運んでくるだけだった。
自室に篭った要は、美しい写真を見つめ、また何度も溜息をついている。要の本棚には、島の歴史書が多く置かれているが、その横に数冊の写真集が置かれている。
「っ…俺は烏を――」
コン、コン
悲痛な顔を浮かびながら発した要の独り言はノックの音で強制的に終わらされてしまった。
「ルキです。入ってもよろしいですか?」
「あぁ、構わない。」
ドアが開くと、すらりと背の高い女が部屋へ足を踏み入れた。
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