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「何だ?お前が俺の部屋に来るなんて珍しいこともあるものだ。」
くるりと椅子を反転させながらくすりと笑った顔でルキを見た。
「珍しい、とは言いようですね。やっと私も二十歳になって、要様の御意志だと、貴方様にお仕えすることを命じられましたのに、そうなるや否や、人払いされるようになられますし、島からは銃声が鳴り続いて『屍烏の右眼の呪いがまた来た』と屋敷の前を騒ぎ立てますしで、お伺いする時間などございませんでしたよ。私がどれだけ…」
「あぁ、わかった。悪かったよ。お前の就任式に行かなかったことも謝る。」
両手を挙げ参ったようにそう言い返した。
ルキも納得したように頷いた。
「相変わらず喋らすと止まらない毒舌だな。お前の敬語は聞いていて恐ろしいよ。」
「それはお褒めの言葉として頂いておきます。ところで一つ、お聞きしたいことがあるのですが?」
「『屍烏の右眼の呪い』だろ?勉強不足だ。一度しか言わない、よく覚えておけ。」
要は深くかけ直し、話し始めた。ルキも手近にあった椅子にかけた。
島は名が無く、沿岸に住む民は『鮮血烏の屍島』と呼んでいた。
そこからは毎日のように銃声が鳴り響いていた。
屍烏は、最期まで軍に逆らい続けて地に還った。
やはり、血塗られた屍烏でも生死の流れには逆らえないと天子の一族は手を叩いて喜び合った。
そして荒れた地の手入れをすべく、再び立て直した神田隊を島へ送った。
が、上陸寸前先頭を行く神田彩造(サイゾウ)の頭に一発の銃弾が風穴を開けた。驚いた隊員が撃った者を鋭く睨むと、その瞳に映ったのは右目に刀傷をつけた白長髪。
呪いの再発。
「『右眼の呪い』ってのは、簡単に言うと、屍烏と同等の姿をしたヤツが島にもう三代も現れているってこった。」
窓から見える鈍色の空。
それは鳥をも遠ざける怪しい光を発するだけだった。
この空に
響くのは残酷な死の警告音。
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