コノ自由ヲ欲セヨ

4/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
天子の前に跪く黒髪の持ち主。綺麗に束ねられた腰までの三つ網と、切り揃えられた前髪。 「神田や、大事な話じゃ。表をあげぇ」 煙管を口から離すと天子は言った。神田も目上者に面を上げることをすまなそうにしながら、その色の白い顔を上げた。 上げられた顔に表情は色濃く出ていなかった。つりあがる瞳に宿す光は生命感が全く感じられない。 「は…何でございましょう?天子様。」 声は幼げな高さを含んでいる。 天子はもったえぶった様に、また煙管を銜え苦味のある煙を吸い込み、誘惑のように甘い匂いを吐き出した。 少女がクスリと、笑った……ように見えた。 「主は今日より神田の最高峰に君臨いたせ。」 言って、すっと煙管を持った手を上げる。すると、黒子のように漆黒の衣で顔を隠した臣下二人が、何か大きな風呂敷包みを持って現れた。 「主にこれを授けよう。」   臣下が風呂敷を取ると、四尺はあろうかという長刀と、長い一つ歯の漆下駄だった。 「これは…」 先祖の神田が初代天子から贈られた神田家の家宝である。 「先代神田からの預かり物じゃ。主の身長では扱いにくいであろうが、先代の遺言じゃ。」 三つ編みの少女はもう一度深く頭を下げた。 「そのような御心配、痛み入ります。」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!