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コノ自由ヲ欲セヨ
響く雷鳴。
大粒の涙を流し続ける鈍色の空。
―ガン……ガンッ、ガン…
今日も乾いた発砲音が響く。
約一五〇年前の二六世紀初頭。
天子の支配を受ける島国二ホンのはずれに在る島。新緑を天子に守られ、神々しささえ漂う美しい所であったいう。
しかし、この島に一羽の烏が舞い降りた。
その烏は漆黒の衣から傷だらけの肌を覗かせ、膝まで伸びた黒髪を結っていた。
獲物を射るような深紅の眼光は一度見たら忘れられないものであった。
男は屍烏(シガラス)と呼ばれ、縛られることを極端に嫌い、このニホン国の天子支配を拒み続け、島に上がるものは何人たりとも己に触れさせなかった。
天子殺害を目論んでいた屍烏を国の最強武装警察隊である初隊神田軍戦隊が討伐へ向かった。
しかし、軍総長 神田陸が右目を刀で潰しただけで、屍烏は千五百の軍人を、懐に持った一丁の銃で全滅させた。
そのしなやかな動きはまさに、自由の一字を掲げ大空を舞う烏そのものだったという。
『国家警察初隊軍事歴史書―第七章 烏降臨―』
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