第一章~曹丕と甄氏~

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曹丕は甄氏の顔を見て、内心驚いた。 甄氏が類いまれなな美貌の持ち主だったからである。 曹丕は思わず彼女に近付いて、その容貌を見ていたが、やがて感嘆のあまりため息をついた。 (これは美しい…。なんという事であろうか) 曹丕は動揺し、足元がおぼつかないまま、家の片付けを兵士に命じ、またこの二人の身辺を警護するように伝えて、その場を立ち去ったのだった… …曹操はギョウが陥落して以来、曹丕の様子がおかしい事を気にしていた。 曹操は他人に対してはどうあれ、息子達を大変に可愛がっていた。 だから、そんな彼が曹丕の事を気にしたのは無理もない事なのである。 人を使って調べさせた内容を聞いた曹操は、苦笑いをした。 「なるほど…子桓(曹丕の字)め、そういう事か…」 何か重要な悩みがあるかと思えば、恋煩いだったとは… 曹操は思案の挙げ句に、曹丕と甄氏を呼ぶ事にした。
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