第二章~母の死~

2/9
前へ
/223ページ
次へ
…建安十二年(207年)九月、曹叡の実の父である袁熙〈エンキ〉が、曹操との争いの中で命を落とした。 甄夫人は幼い曹叡と、この年に生まれた女子(東郷公主〈トウキョウコウシュ〉)を優しく抱き寄せて、人目を避けてはらはらと涙した。 翌年、さらに甄夫人を哀しみが襲う。 まだ生まれて間もない娘が病にて亡くなったからである。 同じ頃、曹操も最愛の息子である曹沖〈ソウチュウ〉を病で亡くしている。 曹操はひどく気落ちして哀しみ、甄夫人の亡くなった娘を曹沖の嫁として、それぞれの悼みを埋めようとした。 それでも曹操の心の穴は埋まらず、戦略を読み違えて、この年の赤壁の敗戦を招いたのだった。 曹操は、曹沖が亡くなってから、心の拠り所を求めるように曹叡の事をかわいがるようになった。 さらに曹叡が五、六才の頃にはすでに人並みより優れた才知をみせたために、年少にして賢かった曹沖の面影を重ねて、より一層溺愛したのである…
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

967人が本棚に入れています
本棚に追加