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「この娘にも、いずれ然るべき婿を探さねばならないな」
「まだこの娘は幼いのですから…」
曹叡は毛皇后の方をちらりと見た。
「事は重大だ。早めに処置をせねばならぬ。そうしなければ、我が皇室を守るのが難しくなる。出来れば、燕王(曹宇)の子に良き相手がいれば良いのだが…」
曹宇の妻は五斗米道の主・張魯の娘である。
こうした宗教的な効果を考えても、やはり曹宇が皇室の行く末を担うのは間違い無いだろう。
曹叡はその様に考えていたのである。
「父上、わたしは母上と父上と、ずっと一緒に暮らしたいのです」
斉公主がそう言うと、曹叡は微笑んで応じながら、昔の自分を思い出していた。
『わたしは家族が一緒なら幸せなのです』
(あれから幾人もが朕の周りから居なくなっただろう)
母の死、父の死、郭皇太后の死、皇帝としての責務、複雑な礼教の慣習…
そうしたものが、徐々に曹叡の心を蝕んでいた。
土木工事の熱が高まり、後宮に行く事が多くなっても、それは完全に癒される事は無かった。
やがてその結果、自ら大きな悲劇を招いてしまうのである…
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