第二十章~時流~

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法を運用するために人材を探していた曹叡に、ある日散騎侍郎の夏侯恵が上表した。 彼は字を稚権と言い、功臣・夏侯淵の子である。 夏侯恵は言った。 「常侍の劉劭〈リュウショウ〉は忠節深く思慮篤実であり、様々な知識を持ち合わせています。機密の事を輔佐し、お側近くに仕えて意見を述べる臣にふさわしく思います」 曹叡は頷いた。 「劉劭なら知っている。以前、『許都の賦』『洛都の賦』を作らせた事があり、それは見事な出来栄えであった」 早速に彼を召し出し、曹叡は言った。 「君を推薦する声があり、法制について意見を聞きたくて呼んだのだ」 劉劭は礼をとって言った。 「臣が思いますに、百官に対する勤務評定は王政の基本であるのに、これを改めず法典は穴が空いたままです。だから、能力がある者と無い者は混在してしまうのです」 曹叡はこの言葉にいたく感心した。 「君の意見には頷くものがある。君に任せるから、法案が完成したら朕に上表せよ」 劉劭は一礼して退出した。 こうして彼の意見によって「都官考課」が制定された。 また彼は儀礼の制定や音楽を作り、風俗を改めようと考えて「楽論」を上表した。 ただこの時は曹叡の体調が悪化していた時期であり、結局は施行されなかった。 曹叡は精神の均衡を崩しながらも、責務を果たす努力を止めなかったのは、真に知られるべき事である…
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