第二十章~時流~

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…郭皇太后が亡くなってから曹叡は、自分がまだ皇帝になる前から知る人材を側に置くようになった。 カン丘倹〈キュウケン、姓がカン丘〉は字を仲恭といい、曹叡がまだ平原侯だった頃からその側に仕えている人物で、即位後は彼の近くにあって騎兵を統率していた。 さらに洛陽の農業行政官となると、上表した。 「天下において除くべきものは蜀と呉であり、急務とするは衣食です。士人庶民が飢え凍えているのに、宮殿を立派にしても益はありません」 幾人もが同様の諫言をして、曹叡も機嫌が良く無かったが、彼はカン丘倹を気に入っていたので、むしろその見識を認めて荊州刺史に昇進させていた。 青龍年間に至って曹叡は彼を思い出して、曹宇に言った。 「荊州刺史はよく任地を治めているようだな」 「はい。わたしも以前から彼を良く知ってますが、陛下に忠誠を誓っておりますから」 「そう言えば…」 曹叡は微笑んだ。 「朕がまだ帝位につく前、彭祖と仲恭(カン丘倹)が酒の席で、どっちが酒が強いか議論になり、もめた事があったな」 曹宇は苦笑いを浮かべた。 「それは忘れて下さい」 曹叡は笑いが込み上げて思わず吹き出し、しばらく二人で笑いあっていたのだった。 やがてカン丘倹は曹叡の命を受け、重要な作戦に参加することになるのだった…
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