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…青龍四年(236年)十二月、病の床にあった司徒の陳羣の病状が悪化したという知らせを受け、曹叡は自ら足を運んで見舞った。
曹叡の姿を見ると、彼は寝台から無理に体を起こそうとした。
「良い、そのままでいるのだ」
「陛下…」
見るからにやつれた姿に、曹叡は胸が痛んだ。
「具合は大丈夫か」
「…どうやら臣も元侯(曹真)、壮侯(曹休)と共に、二祖陛下に会う日が近付いたようです…」
「何を弱気な事を…。朕の周囲から皆去るばかりでは無いか。君は生き続け、朕を輔佐してくれ」
陳羣の頬を、一筋の涙が伝った。
「有り難きお言葉…。臣の子の玄伯(陳泰)は散騎侍郎の地位にあり、我が子ながら優れた点があります。臣の後を継がせても何の支障もありませぬ…」
「…分かった、分かったぞ…」
「陛下…」
陳羣は話し続けようと息を吸い込んだ。
「太尉(司馬懿)は優れた人物ですが、諸刃の剣のような方です。陛下にとって武器にも害にもなりましょう。どうか彼の扱いにはご注意下さい…」
「その言葉、心に止めよう」
「…どうか民を労り、賊徒を誅滅して国を統一して下さいませ…」
曹叡もまた涙を流し、何度も、何度も頷いたのだった…
…十二月二十四日、司徒の陳羣はこの世を去った。
文帝(曹丕)が後を託した四人のうち、これで三人が亡くなった事になる。
ただ一人となった司馬懿の存在は、益々大きくなるばかりだった…
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