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やがて数刻の時間が流れ、自室に籠っていた曹叡は落ち着きを取り戻し、すぐに人を呼んだ。
「誰かあるかっ?!」
しかしたまたますぐに人が現われないと、曹叡は自ら後宮に向かい歩き出した。
(朕とした事が…。すぐに皇后の自決を撤回せねばっ)
時はすでに夕暮れになろうとしていた。
後宮に着いて、夕日が差し込むその部屋で、彼は自らの望みが永遠に叶わない事に知らされた。
毛皇后はすでに自害を果たし、横たわっていたのである。
曹叡は膝をがくりと落とし、手を震わせながら冷たくなった彼女の手を握った。
「何とした事か…!何が皇帝だ…。后の一人の命さえ救えぬとは…!」
彼の頬を止めど無く涙が伝い、毛皇后の衣服を濡らしていった。
「これでは母上を殺した父上と同じでは無いか…!あれほど恨み、母上がいない事を寂しく思っていたはずなのに…」
側にいた斉公主が、泣きながら曹叡に言った。
「何故なのです?父上…何故…」
曹叡は娘を抱き寄せてただ詫びるしか無かった。
「許せ…許してくれ…」
親娘はもう二度と動かない毛皇后の身体にすがり、いつまでも涙を流したのだった…
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